
電気主任技術者の選任形態から外部委託制度の詳細まで丸わかり!【電験転職情報④】
- 転職×電験
- 2024.01.16
高圧以上で受電するビルや工場、病院や商業施設など、電気主任技術者を選任しなければいけない場所は、世の中に数多くあります。
では、
・どういった形で電気主任技術者は選任されるのでしょうか?
・電気主任技術者の選任にはどのような形態があるのでしょうか?
・選任や専任、外部選任や外部委託などはどのような違いがあるのでしょうか?
電気主任技術者の選任は法律も関わっていて、出てくる言葉も、専任、統括、兼任、許可選任、外部選任、外部委託と似たような言葉が多く、正直理解しにくいです。
この記事では、そんな少しややこしい面を持つ電気主任技術者の選任や外部委託について、できるだけ分かりやすく解説していくことを目指しています。
★この記事を読めば分かること★
✅電気主任技術者の選任が必要な理由
✅電気主任技術者の選任形態
✅外部委託承認制度について
詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
1|電気主任技術者の選任とは?

まずは電気事業法の第43条を見てみましょう。
<引用>
事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
ここで、事業用電気工作物を設置する者(設置者)は、その保安監督をさせるため、電気主任技術者の選任を行うことが定められています。
例えば、商業施設などの建物や工場、病院などの中でも、高圧以上の電圧で受電している施設であれば事業用電気工作物があるということになるため、電気主任技術者の選任をしなければなりません。
そもそも「選任」の言葉の意味は、複数人の中から選んで、その任務に就かせることです。
電気主任技術者の選任も、数いる人の中から電気主任技術者の資格を持つ人を選んで任せる、という形になります。
なお、ここからは選任する必要がある工場やビル、発電所などの総称として事業場と呼んでいきます。
1-1 電気工作物の種類
電気工作物とは、電気を供給するための発電所、変電所、送配電線路をはじめ、工場、ビル、住宅等の受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称です。
一般用電気工作物等 | 他の者から低圧(交流600V以下)の電圧で受電している場所等の電気工作物 (例)一般住宅や商店、コンビニや小規模な工場や、一般家庭の太陽光発電など |
|
事業用電気工作物 | 事業用電気工作物 | 一定規模以上の電気事業に使用する電気工作物 (例)電力会社や工場などの発電所、変電所、送電線、配電線 |
自家用電気工作物 | 事業用電気工作物の中で高圧以上の電圧で受電している施設等の電気工作物 (例)工場やビルなど600Vを超えて受電する需要設備 |
|
小規模事業用電気工作物 | 一定規模以下の電気事業に使用する電気工作物 (例)10kW以上50kW未満の太陽光発電設備、20kW未満の風力発電設備 |
2|電気主任技術者の種類と選任

では、どの種類の電気主任技術者の資格取得者が、どんな形で選任される必要があるのでしょうか。
まず、どの種類の電気主任技術者を選任するかは、「3種、2種、1種」の種類ごとに、保安監督できる電気工作物が異なりますので、その事業場に設置している事業用電気工作物の使用電圧、もしくは発電所の場合はその出力によって決まってきます。
保安監督できる電気工作物 | 対象施設の例 | |
---|---|---|
3種 | 電圧5万V未満の事業用電気工作物 (かつ出力5,000Kw未満の発電所) | 工場、ビル、コンビニ、 小規模太陽光発電設備 |
2種 | 電圧17万V未満の事業用電気工作物 | 大規模工場、大規模ビル、発電所、変電所、中規模の太陽光発電設備 |
1種 | すべての事業用電気工作物 | 大規模変電所、大型発電所 |

対象施設の設置者さんは、上記の条件を満たす資格所有者を選任する必要があります。
3|電気主任技術者の選任形態

次にどのような形で選任を行うか、選任形態について見ていきます。
選任形態は、大きく分けて3つ、自社選任と外部選任、そしてあまり多くはないですが選任許可の形態に分かれます。
まずは表にして見てみましょう。
選任形態 | 自社選任 | 外部選任 | 選任許可 |
選任対象 | ・設置者又は自社の役員もしくは従業員 ・電気主任技術者の免状取得者 |
・外部委託会社又は派遣法に基づく派遣 ・電気主任技術者の免状取得者 |
・設置者又は自社の役員もしくは従業員 ・電気主任技術者の免状を取得していないが法定要件を満たす者 |
管理できる設備の規模 | 出力等制限無し | 出力等制限無し (自家用電気工作物のみ) |
最大電力500kW未満 |
常駐/非常駐 | 常駐 | ||
設備数 | 原則として一つ | ||
業務 | 電気工作物の保安監督(点検作業者は、別に存在することもある) | ||
選任について | 兼任可能 |
不可 |
電気主任技術者の選任形態は、「自社選任」が原則とされています。
自社選任とは、その名の通り、自社の役員か従業員の中から電気主任技術者の資格取得者を選任し、自家用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督を行う方法です。
よくあるのが、自社の従業員で、電気主任技術者取得者が選任する場合ですね。
自社選任に対して、自社ではなく外部の会社から電気主任技術者の選任を行うのが「外部選任」です。
こちらは、ビル管理会社が外部選任を受けるケースが多いです。
ビル管理会社の従業員が、該当の事業所に常駐する形で保安監督に従事します。
また補足として選任許可という、最大電力500kW未満の設備にあたっては、設置者又は自社の役員もしくは従業員のうち、電気主任技術者の取得者でなくても法定要件を満たした場合に選任できる形態もあります。
今回は詳しく取り上げないので、許可される場合の例は以下を参照くださいね。
3-1 自社選任と外部選任の選任形態
続いて、自社選任と外部選任においては、専任・統括・兼任の3つの選任形態に分かれます。
選任形態 | 自社選任 | ||
専任 | 統括 | 兼任 | |
対応できる設備の規模 | 出力等の制限なし | 170,000V未満の太陽光・風力・水力発電設備 | ・高圧以下の設備 ・太陽電池発電設備は5,000kW未満 ・それ以外の設備は2,000kW未満 |
常駐/非常駐 | 常駐 | 非常駐 (統括事業場に常勤) |
非常勤 (専任事業場に常勤) |
事業場数 | 1カ所 | 6カ所 | 6ヵ所 (専任1+兼任5) |
業務 | 電気工作物の保安監督 | ||
外部選任 | 可能 | 不可 | 可能 |
備考 | ー | 保安組織の構築が必要 | 専任事業場は特別高圧でも良い |
通常、事業場の数が1つの場合が多く、選任された電気主任技術者が常駐する形をとれるので、「専任」形態になることがほとんどです。
ここで、事業場の数が複数になる場合、全ての事業場に一人の電気主任技術者が常駐することは当然できないので、「統括」と「兼任」という形態をとります。
「統括」は、170kV未満の太陽・風力・水力発電設備に6カ所対応可能です。
ただし、統括事業場と言われる決まった事業場に常勤をして、保安組織の構築も必要です。
「兼任」の場合は、高圧以下の設備(太陽光発電設備の場合は5,000kW未満、それ以外の設備であれば2,000kW未満)に6カ所まで対応できます。
こちらも1カ所は専任し常勤する必要がありますが、専任現場が特別高圧であっても対応することができます。
要は事業場の数が1つなら「専任」、事業場が6つ以内に限り、発電所メインなら「統括」、高圧の需要設備が中心なら「兼任」となるのです。

なお、専任と兼任は自社選任だけでなく外部選任も可能です!
4|電気主任技術者の外部委託について

原則自社選任だと言っても、自社に必ずしも該当する電気主任技術者資格を持つ従業員がいるとは限りません。
そのため、「保安管理業務外部委託承認制度」という制度を活用し、自社の電気主任技術者を選任しない企業も多くあります。
では「保安管理業務外部委託承認制度」とは一体どういう制度なのでしょうか。
4-1 保安管理業務外部委託承認制度について
初めにお伝えした通り、電気事業法第43条第1項の規定により、事業用電気工作物の設置者は、保安監督をさせるため電気主任技術者を選任しなければならないのですが、電気事業法施行規則第52条第2項の規定により、例外を設けています。
電気事業法施行規則:
電気事業法に定められる内容を実施するために経済産業大臣が制定した命令(省令)
そして52条2項では、自家用電気工作物が事業場にあったとしても、一定の要件を満たす事業場であれば、一定の要件を満たす電気主任技術者との間で委託契約を結ぶことができ、電気主任技術者を選任しないことができると定めれられています。
そして、この制度が「保安管理業務外部委託承認制度」であり、その制度の下での働き方をここでは通称「外部委託」と呼ぶのです。
4-2 外部委託の要件
ではどういう要件を満たせば委託契約を結ぶことができるのか、表にしてまとめて見てみましょう。
形態 | 外部委託 | |
対象 | 個人 (電気管理技術者) |
法人 (電気保安法人) |
管理できる設備の規模 | 自家用電気工作物は高圧(交流7000V)以下の設備 太陽光発電設備5,000kW未満 それ以外の発電設備は2,000kW未満 |
|
常駐/非常駐 | 非常駐 | |
設備数 | 換算値が33点未満であれば複数設備の管理可 | |
業務 | 保安管理業務(点検作業を自ら実施) | |
対象条件 | ・電気主任技術者免状取得者 ・一定の実務経験(3種は5年、2種は4年、1種は3年) ・その他条件あり |
外部委託を受けることができるのは電気保安法人か電気管理技術者となります。
電気主任技術者免状だけでなく実務経験年数も一定年数必要となり、その申請を経済産業省に行っている法人か個人事業主です。
事業場の要件は、自家用電気工作物で高圧以下の設備(および一定未満の発電設備)となります。
外部委託の場合、設備容量(および出力)によって定められた換算係数が33点未満であれば、複数の設備の管理を行うことができるので、非常駐となっています。
▼その他の詳しい要件は電気事業法施行規則52条2項をご覧ください。
▼具体的な申請書類はこちら
このように、外部委託は通常の選任と特徴が大きく違っていることが分かります。
そしてこの保安管理業務外部委託承認制度を利用すると、電気主任技術者を「選任」しなくてもよく、「委託」によって保安監督を行っていくことが可能となります。
「選任しなくてもよい」ということは「常駐の必要がない」ので、選任よりも利用しやすいため、高圧受電の事業場の場合は外部委託を選ぶ事業所も少なくないのです。
5|電気主任技術者の働き方を知ろう!

電気主任技術者として働く際には、さまざまな形・条件があります。
電気主任技術者をこれから目指す方や技術者になりたての方々にとっては非常にややこしく、難しい話かもしれません。
ただ、選任と外部委託が規定によっても、大きく違っていることも知ることができたのではと思います。
選任と外部委託の働き方が違うのはこのような規定の違いに基づいています。
そして、今回紹介した具体的な選任形態の種類や内容については、技術者として仕事を続ける中で、少しずつ理解していくことも大事になります。
「電気主任技術者の選任ってそもそもどういうことなんだろう?」
「よく選任、専任、外部委託…という言葉を見かけるけど違いは何?」
と、電気主任技術者について疑問に思った際に、この記事を改めてチェックして頂けると幸いです。
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電気主任技術者メディア編集部
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電気主任技術者専門の転職エージェント株式会社ミズノワが運営する「電気通信ピカリ」内の記事を執筆・発信中。
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