
保安法人に転職のチャンス!?~実務経験年数が1年になる?上でのメリットと問題点と電気管理技術者の課題~
- 転職×電験
- 2025.05.09
2024年11月14日、とうとう経済産業省さんから実務経験年数が最短1年(条件付き)で保安管理業務が行えるという告示の改正が公布されました。
それに伴い、電気保安業界はどのように変化するのでしょうか?
もうすでにこの業界にいらっしゃる方にとっては、漠然と不安を感じるかもしれません。
反対に、電気管理技術者になりたい方にとっては、
「最短1年で独立できる!」
と思われているかもしれません。
実際のところこの改正によってどこにメリットがあるのでしょうか?
今回の記事を読んで、業界の見通しを持っていただけたらと思います。
★この記事を読んで分かること★
✅ 実務経験が1年になる条件とそのメリットと問題点
✅ 電気保安法人の採用の現状
✅ 電気管理技術者の課題
動画にもまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。
1|実務経験が1年になる条件

元々、外部委託として保安管理業務を行うのに必要な実務経験年数は以下の年数と決められていました。
第3種電気主任技術者 | 5年 |
第2種電気主任技術者 | 4年 |
第1種電気主任技術者 | 3年 |
それが2021年3月1日以後、29時間の保安管理業務講習を受ければ、一律3年(※2年)に変わりました。
そこに加えて、2024年11月14日より、75時間の保安管理業務訓練を受ければ、一律2年(※1年)になったのです。
※ 設備容量が一定(300kVA)以下と設備が小型かつ受電設備がキュービクル式・主遮断装置がPF-S式と構造が簡易なもの(LBS受電(簡易受電方式)は1年減じます
電気管理技術者として働くために、電験3種を取得された方が
「じゃあ、実務経験を1年積んで独立しよう!」
と考えられたとしても、まずは実務経験を積んで独立しやすい場所が全然ないという現状があるのです。
(詳しくはこちら)
では、この実務経験の短縮は、誰にとってメリットがあるのでしょうか?
2|実務経験が1年になるメリットとは?
実務経験年数が1年になることで一番大きなメリットがあるのは、電気保安法人です。
電気管理技術者は個人事業者ですが、電気保安法人は電気保安を行う法人です。
例えば、実務経験がない方が電気保安法人に採用された場合、今までは5年間という実務経験年数を補助者として働き、その後ようやく、お客さんと契約できる様な社員(保安業務従事者)になることができました。
そのため、電気保安法人にとって、5年の間補助者にはらう給与は、教育投資という意味合いが大きかったと言えます。
その年数が極端に言えば1年、つまりは1/5になるのであれば、大分ありがたい形になります。
実務経験を積んだ後はお客さんの担当(保安業務担当者と呼ばれます)となるため、電気保安法人にとっては教育投資の回収に繋がっていくのです。
要は、電気保安法人の教育投資費用を少なくする、その結果採用枠を増やしていき、人材不足を解消していくという流れとなるのです。

実際は300kVA以下の物件だけを担当されるのも難しい場合がありますから、2年の実務経験を必要とする企業がほとんどかと思われます。
3|電気保安法人の採用の現状

そうすると、電気保安法人に長く務めることを目的として転職を考える方にとっては、大きなチャンスとなります。
実際に、未経験でも募集をかけ始めた保安法人さんはぽつぽつと現れています。
ただ、気を付けないといけないのは、対象年齢や給与のイメージが合うかどうかです。
よく聞くのが、未経験の方であれば、キャリア形成のため30代中ごろまでとしている会社さんが多いです。
(もちろん会社さんによって変わってくるので、50代未経験で電気保安法人に入社された方もいらっしゃいます)
それと、入社1年目の年収が300万円台が多いのが実情です。
(400万円台になる企業さんも時々あります)

転職活動を今後考えられる方は上記を一つのご参考にされると良いかと思います。
4|実務経験が1年になることで考えられる問題点…
一方で、実務経験が1年になることで考えられる問題点が3つあります。
① 選任現場や保安法人など採用企業にとって
未経験者を採用しても、その方が実務経験を積んで電気管理技術者になるために2年で退職するという風になってしまうと、経験を積ませる環境である採用企業が疲弊する結果になります。
教育してこれから活躍してもらいたい人物が、その技術を社外で活用していくことになるのですから…
だからこそ、採用の見極めや、人が辞めてしまわないような体制や魅力をどう作っていけるのかが大きな課題になってきます。
② 保安法人や選任やその補助業務を経て電気管理技術者になる場合
大きな問題として、技術者としてのレベル不足を補う制度が無いということが挙げられます。
保安管理業務講習だけを受講して独立しても、一人で業務を行えるレベルにはならず、独立したとしても技術面で不安が残ります…
しかも、電気管理技術者協会には個人的な指導がメインとなり、点検作業を教える教育体制が全体にいきわたっているわけではないと聞きます。
また、お客様とのコミュニケーション方法・保護協調の考え方・各機器の特性・事故対応方法など、実務座学も必要になってきます。
特に問題なのは、それを学ぶ機会がなく現場に出ることで自信のない技術者が増え、お客様からの不信感が募り、電気主任技術者の立場が低くなるのではと危惧されます。
③ 電気保安業界全体として
実務経験1年で保安管理できる物件は、300kVA以下という小ぶりの受変電設備だけという条件です。
その場合、契約単価が安価帯になり、点検担当数も爆増します。
そうすると、電気主任技術者としての業務が、単に点検・試験をする業者としての位置づけとなってしまう恐れがあります。
外部委託の業務は、単に点検や試験作業を行う業者ではなく、本来は自家用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督をする必要がある業務ですから、大きく矛盾してしまうのです。
※ 電気管理技術者の場合、300kVA以下しか担当できないというのは、なかなか案件を渡しにくいので、現実的ではないところもあります
5|見えてきた電気管理技術者業界の課題

電気主任技術者の実務経験に焦点を当ててみると、電気管理技術者業界の気になる疑問点も見えてきます。
前述したように、実務経験年数が短縮された結果、1~2年ほどで退職される方が出てくる可能性が考えられます。
これに対して、「電気管理技術者協会の中で実務経験を積むことができれば、他の企業に迷惑をかけずに独立できるのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか?
しかし現状、実務経験を積めるような体制を用意している技術者協会はないように思います。

個人的にご親族の方を少ない給与で雇って実務経験を積ませるという形は聞いたことがあるのですが、電気管理技術者協会の組織体制として、実務経験が積めるような環境を作っている協会は聞いたことがありません…
(もしあるのであればご連絡いただけたらと。修正させて頂きます!)
電気管理技術者協会において実務経験を積める体制があまり見られないのは、組織構造的な課題なのかと。
業界内において、「電気管理技術者は年収がいい」とよく言われています。
それは、組織自体の運営や給与などのお金が必要な電気保安法人(企業)と違って、組織で確保しなければならないお金が少なく、その分のお金を技術者個人が得ることができるからです。
つまり、電気管理技術者個人に回るお金が多い反面、実務経験のない方に対して支払われる給与といった教育投資分等のお金を蓄える場所が組織にないのかと思います。
電気保安業界の将来を考えたとき、実務経験を積めるような教育体制を作るように組織構造を変えていくことが、電気管理技術者協会にとって大事なことなのかもしれませんね。
また、今まさに電気管理技術者になろうという方たちも、次の世代を育てるための資金を自身で貯めておくことが、現状の電気保安業界にとって必要であるという認識を持たれるのが良いのでは!?と思っています。

いずれにしても、実務経験に関するこのような現状があることを知った上で、電気保安業界に進んでいただけたらと感じます!
6|ミズノワでできること
電気管理技術者業界の課題も多く見えてきましたが、ここでミズノワとしてできることはあると考えています。
それは2つ。
・電気保安法人に対して、長く勤める意志のある方を紹介する
・電気保安法人・電気管理技術者ともに、理論に基づいた研修を実施
① 電気保安法人に対して、長く勤める意志のある方を紹介する
電気保安法人としてのメリットは組織であることです。
社会保険など雇用に関する事務作業は自分であまり携わる必要なく、技術の仕事に専念できます。

逆に、「全部自分でしたい」という方は電気管理技術者の方が向いていますね!
また、教育体制の構築を心がけているので、未経験の方にも安心です。
ただ、会社によって規模や体制作りに違いがありますから、どの組織になじむことができるのかを見極めるのが大事だと言えます。
見極めが非常に大切だと分かった上で、弊社では求人のご紹介をさせていただきます。
そうやって弊社から紹介した方が長く働き、組織に対しても業界に対しても貢献する流れを作ることを目指しています。
何よりこの電気保安業界を発展させていくのは、個人の力を上げていきながらも、その上で組織が大きくなることです。
大きい組織が使える資金力を活かし、新しいイノベーションを起こしていくことが業界の発展にもつながるかと思います。
そういう意味でも、ミズノワでは採用の面から電気保安人さんのサポートを続けて行きます。
② 電気保安法人、電気管理技術者ともに、理論に基づいた研修を実施
電気保安業界に入ると、試験器を用いた業務を多く行うことになります。
しかし、「そもそもその試験は何のために行う?」「何を基準にするべき?」などといった根本の理屈を教えられる機関があまりありません。
ミズノワではこのような実務知識を、個人の方に対しても、企業さんに対しても行っています。
企業さんに対しては、電気保安法人さんだけでなく選任現場の企業さんに対しても、カフェジカ講習という形で講習を行っています。
カフェジカ講習では、カリキュラムに基づいた講習を行い、目当てに伴った振り返りのレポート作成をしていただきながら、一人一人の成長を目指して返答を行うといったように取り組んでいます。

何よりも、個々人の「電気主任技術者業務を楽しみましょう」というスイッチを見つけていくことをスローガンにしています。
楽しみながら知識を得て、活用することでお客さんを喜ばせ、仲間にも頼られる関係性を作っていくことを目指しています。
こうすることで、電気保安業界の知識・技術の底上げに貢献出来たらと思っています。
ですから、
「電気保安法人で長く勤めたい!」
という方は転職サポートで採用可能な電気保安法人さんをご案内させていただきますし、
「電気管理技術者として独立するけれども実務知識が不安…」
という方は、実務イベントにご参加(もしくはアーカイブ動画の購入)いただけたらと思います。
(電気保安法人に対しては全体研修を行います)
ミズノワでできる事を、こつこつと取り組んでまいります。
外部委託従事者(電気保安法人で働く保安業務従事者と個人で働く電気管理技術者の総称)として働きたい方、ぜひ頑張ってください。
(もちろん、電気保安法人さんや各技術者協会さんも!)
電気保安業界をより良い形にできるのは皆さんだと思います!
特に、電気保安法人さんはこの改正により、人が充足していくと良いですね。
その結果、人を集めることよりもお客さんを喜ばせようとするサービスの改善に意識が向かえればと考えております。
そうやってこの電気保安業界が発展の道に進むことを期待しています。
そのために、弊社はできるサポートを精一杯させていただきます!
7|電験転職サポートと実務動画コンテンツのお知らせ
①転職サポートに相談してみたいという方
ご相談を希望される方はぜひ以下からご連絡ください!
▼電験転職サポートの詳細はこちら▼
②実務イベントに興味がある方
ミズノワが運営するカフェジカでは、毎週土曜日にイベントを開催しております。
また、電気主任技術者のためのカフェジカWebストア「ジカスト」では、実務や実践の知識から電験対策動画まで、各種イベントアーカイブをご用意しています。
実務動画に興味がある方は、ぜひジカストをチェックしてみてください。
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【著者情報】

電気主任技術者メディア編集部
電験や実務など、「電気主任技術者」にまつわる情報に特化したメディアコンテンツ制作集団。
電気主任技術者専門の転職エージェント株式会社ミズノワが運営する「電気通信ピカリ」内の記事を執筆・発信中。
転職エージェントとして、求人案内総掲載数240件以上、求職者様の総ご相談者数1,500名を超える実績を持つミズノワ監修のもと、分かりやすくて面白いメディア運営を進めております。