「キュービクルとの付き合い方より、人との付き合い方が大切」ー電気主任技術者の価値を再定義するフジエレックスの挑戦ー
- 技術者インタビュー
- 2026.04.08 更新日:2026.04.14
広島を中心に展開する、電気管理技術者が集まって作った電気保安法人!
平均年齢なんと30歳!
今回は、顧客に対して優しさを持ち、電気の顧問として価値提供を行うという方針を掲げる電気保安法人「株式会社フジエレックス」の藤井康揮さんにお話を伺いました。
本来の外部委託業務が「忘れかけている大事なもの」をしっかり展開できる保安法人力をお持ちのフジエレックスさん!
電気保安法人に向けたコミュニティも展開する計画もあり、電気主任技術者の価値を具現化させる「鍵」となるのかもしれない…
外部委託の電気主任技術者に興味がある方は、ぜひご一読くださいませ!
フジエレックス 代表取締役
藤井康揮さん
工業高校卒業後、地元の保安協会に入社。約10年間保安協会に務めたのち、祖父の電気管理技術者の仕事をするため、電気管理技術者として独立。「年収 1,000 万稼いで週休 2 日取れる組合を作りたい」という理念のもと、保安法人設立を決意。2023年に「株式会社フジエレックス」(https://fuji-elex.com/)を立ち上げ、「契約前無料点検」などの他社にはない徹底した提案力で多くの設置者へ信頼と安心の電気保安サービスを提供している。
”落ちこぼれ”だった会社員時代
自分、落ちこぼれなんすよ。保安法人でめっちゃ落ちこぼれなんです。
10 年間保安協会にいて最終等級は 3 等級止まりなんです。
10年もいたら普通は5等級くらいいくんですよ。
でも自分は電験が7年くらいずっと取れなかったんで。
経歴を伺ったところ、開口一番に出てきたのはこの一言でした。
そもそも、電気とはまったく違う、ファッション業界で働きたかったと言う藤井さん。
それなのに工業高校に入ったのは、古着屋に通いやすい市内の高校に推薦で行くための口実として、電気管理技術者の祖父の仕事を継ぐと言ったからだそう。
ただ、卒業後の進路については「おじいちゃんを継ぐって宣言して高校に入ったのだから」と両親から諭され、電気の仕事である保安協会に入社。
しかし、電験がなかなか取れなかったがゆえに仕事を任せてもらえず、後輩にも抜かされる日々が続きました。
電験を持っていれば技師補としてできる業務幅が広くなるけれど、資格を持っていないから補助者としての仕事しかできない。
技師補じゃないとできない仕事は大量にあるので、仕事を任せてもらえなかったり、後輩から抜かされたりすることに苦しさや悔しさを感じていたそうです。
そんな思いを募らせた5~6年の間で、こんな自分がどうやったら勝てるか、どうやったらこの組織の中のピースとしての居場所を作れるか、と組織や構造を俯瞰で見るようになったと振り返る藤井さん。
次第に、上の人の出世ルートや会社の収益構造などが見えてくるようになったと言います。
会社員から電気管理技術者へ、独立の第一歩

電験の資格を持っていない「補助者」としてなんとか働いてきた藤井さん。
そんな中、できる限り仕事を振ってくれた上司との出会いがあり、「これは恩返ししないと」という気持ちで、日々の業務や電験の勉強に励んだそう。
そして、7年ほどかけて電験に合格!
補助者として働く中で、「そもそも保安規程とは?」「会社って何?」「保安って何?」と考えるクセ付けができていたからこそ、電験取得後はかなり効率よく仕事をこなせるようになっていたと言います。
電験取得後は大規模な施設で、新しく設備を建てる際の設計や工事について相談を受けることも多く、そこで保安管理の実務や決裁者との関係、利益率改善などを学んだそうです。
独立後のピンチ
電気管理技術者として独立すると、会社員として働くのとはまた違った大変さが出てくるのだと思います。
実際に独立後に困ったことはあったのかを聞いてみたところ、このような答えが返ってきました。
独立当初は稼ぎたい一心で、目が円マークになってました笑
稼ぎたい一心で仕事をとにかく増やしていたら、だんだん手が回らなくなってきて。
知り合いの紹介で、外国人が運営するスクラップ屋の保安管理を引き受けていた藤井さん。
しかし、手が回らなくなってきたり、他にも理由があり解約を申し出たところ、電気工事屋さんと外国人オーナーを前にして 6 時間ほど監禁されたんだとか。
「なんで辞めるのか」と詰められながら、ずっと泣いて謝り続けたという藤井さん。
結果、解約はできたものの、かなり大きな案件ではあったため、売上は 6 割ほども減ったそう。
しかし、一人では手が回らないという状況から契約数を減らして余裕を作ったのが功を奏します。
今でも付き合いのある太陽光EPCの会社と出会い、法人化できるほどの売上を作ってくださる関係につながったと言います。
この経験から、ただ自分のビジネス拡大を考えるのではなく、自分の時間・稼ぎのバランスを取る必要があると身をもって学んだそうです。
法人立ち上げの理由

電気管理技術者として使用前自己確認等も手掛けるようになってきたころには、かなりの売り上げになってきていたという藤井さん。
当時は、一日に4件もハシゴしたり、一か月で使用前自主検査を28件もやったりと、ほとんど休みなく働いていたそう。
しかし、お金を稼げるようになると、税金の問題が出てきます。
売り上げはあったんですけど、口座にお金はなかったんですよ、不思議なんですけど笑
そこそこ稼いではいたので、その半分の額の税金が来ることになったんですけど、どう考えてもその額を年末までに稼いで貯めるのは無理だったんですよ。
経費もちゃんと使ってなかったし。
頑張って働いたがゆえに、高額な税金に立ち向かわざるを得なくなった藤井さん。
これはまずい、と青ざめて税理士に相談したところ、「法人化するしかないですね」という一言をもらい、法人化を現実的に考え始めたと言います。
電気管理技術者をやって気付いた、「個人」の限界
税理面での問題に加えて、電気管理技術者として一人で現場を駆け回る限界に直面したのも、法人化を決断するもう一つの理由でした。
「年収 1,000万稼いで週休2日取れる組合を作らないか」という考えが、保安法人を立ち上げた根本的な理由だと言う藤井さん。
そう考えたきっかけは、「個人」の限界に気付いたからだったそう。
個人の電気主任技術者は「年収 1,500 万稼げる」とよく言われるけど、それを実現するには約 30 点分の顧客を持ち、試験の応援やコンサルもある程度やる必要がある。
でも、停電や漏電、天災があった時に助けるという責任や、顧客の維持管理を一人で果たすのは非常に難しく、顧客に対して嘘をついている気がしたんです。
真面目にやれば年収 1,500 万稼いでも週休 0 日になり、常に気を張っていなければならない。
そんな状態では、本当の意味で休みが取れているとは言えないと実感したと言います。
技術者がしっかり休めて、適切な年収も得られる環境を作る。
個人事業では実現困難だった「顧客への責任」と「働く人の幸せ」の両立を目指すようになりました。
優秀な後輩を同じ目に遭わせたくないという想い
自分より優秀な後輩は絶対ここ(同じ苦労)を通るだろうなって思ったんですよ。
だったら、後輩たちがそういう苦労をしないようにして、組合のようなものを作ったらうまくいくんじゃないかなって。
自身の苦い経験を、後輩や周りの仲間に味わわせたくない。
人を思いやる優しさからも、フジエレックスは成り立っているようです。
高くてもフジエレックスが選ばれる理由

個人の限界を感じ、保安法人を立ち上げた藤井さん。
現在は、電気主任技術者本来の価値を意識して、高い技術力と迅速な対応を兼ね備える保安サービスを提供しています。
フジエレックスさんでは、ほとんどの契約先で大手保安法人や大手民間法人よりも高い外部委託の保安管理手数料で契約できているそう。
高くてもフジエレックスが選ばれる理由は何なのか?
なかなか聞けない電気保安法人の経営の生の声を聴かせていただきました!
①顧問としての立ち位置
顧問っていうのは、そのお客さんの知的リソースじゃないですか、簡単に言うと。
俯瞰で構造を見ることを得意とする藤井さん。
ここでも、本来の言葉の定義を確実にとらえ、見事に事業活動に反映させています。
点検や技術だけでなく、顧客の知的リソースとして安心感や業務改善を提供することを重視しているそう。
責任のありかについても、きちんと明確にして、お客さんと対等な関係を築いているそうです。
②顧客に寄り添う優しさ
そもそも優しくない奴が多いんですよ!電気主任技術者って!
なんかちょっと主語がでかいですけど笑
技術的な指摘をする際や説明の際など、もっとお客さんに優しく対応できるのではないか?と業界に疑問を投げかけています。
実際、社員教育でも、技術ミスよりコミュニケーションの失敗を叱る、と言います。
また、優しさを重視するからこそ、サービスを説明するときには「金額はちょっと高いです」って言いますよ、と語る藤井さん。
人に優しくありたい、誠実でありたい、というお人柄がよく伝わる会社方針だとひしひしと感じました。
優しい人が勝つ構図を作りたい

現在、少数精鋭の人員でクオリティの高いサービスを提供しているフジエレックスさん。
採用において大切にしていることを伺いました。
やっぱり、フィーリングが合うかは重要視していますね。
フィーリングというのは、優しかったり、前向きだったり、人に寄り添ってあげられるかどうかだったり。
もちろん技術力も必要な仕事ではありますけど、優しい奴が絶対勝っていく構図を作ってあげないとと思っています。
採用面でも「優しさ」を大切にする藤井さん。
「客商売」であることをきちんと理解することも、電気主任技術者の仕事をする上で大事だと語ってくださいました。
外部委託の本来あるべき姿とは?

外部委託の本来の姿。
このインタビューを実施するときに、水島さんの口から出た言葉でした。
では外部委託の現在の姿はどのようなものなのか?
本来の姿と現在の姿はどれほど乖離しているのか?
本来の外部委託業務について、藤井さんと水島さんに語っていただきました。
①顧問としての役割
自分たちが「顧問」って名乗ってることはつまり「知的リソース」であることだと認識しています。
じゃあどうやって知的リソースを提供できるかって考えると、安心感や仕事の運営を良くするという「苦労を取ってあげること」が重要だと僕は思っています。
だから、点検とか技術が最重要だと思ってないっていうところもあるかもしれません笑
責任の範囲についても、「電気設備にかかわることは全部責任ある」ってことが、認知されてないことについて懸念しています。
自分たちが顧問であるという立ち位置を意識して活動されているのがすごく大事なポイントだなと思っていて。
組織が大きくなるほど、「点検するだけの組織」になるのがこの業界のパターンだと思うんですけど、点検するだけだったら「顧問です」なんて怖くて言えないようになっていくと思うんです。
そんな業界の中で藤井さんは、社員さんへの信頼もあるし、お客さんとも信頼関係を築いているから堂々と顧問って言えるのがほんまかっこいいなって。
電気保安をやっている会社すべて、業界全体が「自分たちはお客さんの顧問だ」として自信を持てるようになってほしいなって思いますね。
②人との付き合い方
なんか人付き合いじゃないですか、この仕事って。
なんですけど、なんかキュービクルとの付き合いが重要だと思ってる人たちが多すぎて!
おー!!それ名言!超名言!
正直、主任技術者の中には優しくない人も一定数いると感じてるんです。
だから僕がうちの社員に怒るとしたら、メールの打ち方とか、見積もりをただ送っただけでフォローしていないとか、コミュニケーションに関わる部分についてですね。
物が壊れても最悪、後で修理したり買い直したりすることはできるけど、相手に寄り添ったり優しくしたりするのは今この瞬間しかできないと思うので。
③社会的認知度の向上
一番やばいと思ってるのは認知不足だと思ってて。
電気設備とか高圧受電設備って世間にごまんとあるじゃないですか。
だってコンビニが高圧受電設備ですよ?
税務の知識なかったら税理士さんに任せる、会社作ったら社労士さんに任せるって構図は認識されているのに、電気、高圧受電設備あったら主任技術者に任せるっていうのは世間的に知られてないじゃないですか。
設置者も知らん…のはもちろんだし、保安やってる担当者も理解せずに保安活動してる人も多いよね。
キュービクルから先はうちら関係ないでーとか、保安体制を構築できていなかったり、保安規程や点検基準の認識も弱い方が多い…。
④倫理観とプロ意識を持った運営
法律が変わってしまうとまずいからバレないようにするんだ」みたいに仰られる方に会ったことがあるんですけど、何かに縋り付いてやるような仕事だったらなくなってしまえ!って本気で思ってます。
自分は、電気主任技術者としてのプライドを持って仕事してますし、少なからず社会に貢献している感覚を持って仕事をしています。
電気主任技術者のコミュニティを作りたい

藤井さんがコミュニティを作ろうと思った最大の理由は、情報不足と閉鎖的な業界環境への問題意識だと言います。
電気のことって、ネットで調べても答えが出てこなかったり、情報がオープンにされていなかったりすることが多いなって思っていて。
経営とか営業とかのセミナーって世の中にごまんとあるじゃないですか。
じゃあなんで電気は学べる場、知識を得られる場がないんだろう?って思ったのが一番のきっかけでした。
「電気主任技術者って、結構弁護士とか税理士と近い仕事だと思うんですね。」と語る藤井さん。
確かに、電気主任技術者も、法律に則って仕事をする点でかなり近いと言えます。
藤井さんが実際に、「どうやって弁護してるんですか?どうやって決めてるんですか?」と弁護士さんに聞いたところ、「過去の判例を見てる」と言われたときに、ひらめいたそう。
これって、電気主任技術者も同じことができるよな、と。
電気主任技術者のほうが定量化できる基準は多いと思うので、過去の事故事例とかを共有したり調べたりできる仕組みがあればいいなって思ったんです。
フジエレックスのこれから

最後に藤井さん個人として、フジエレックスとして実現したい未来のお話を伺ったところ、貴重なエピソードを聞くことができました。
電気主任技術者に限らず当てはまる経験かも知れません。
実は保安法人を立ち上げたきっかけは、次男の出産に立ち会えなかったというエピソードも一因なんです。
当時、里帰り出産でお互い離れたところにいた藤井さん夫婦。
まさに出産のタイミングで、保安管理契約している工場で電気火災が起こってしまったそう。
仕事だったとはいえ、奥さんが一人で大変な思いしてる最中に、飛行機はビジネスに乗って、空港からはタクシーに乗って…。
「お金使ってるのに、自分は何にも家族にできないんだなって思ったんです。そのとき、稼ぐのやめようって思ったんです。」と、当時の気付きを教えてくださいました。
時間が無かったり、心の余裕が無かったりするのが一番悪だと思ったんです。
個人になったらすぐ稼げるみたいな話もあるけど、お客さんに寄り添えないどころか一番大切な家族にも寄り添えないんだなって。
そんな苦い経験があるからこそ、電気保安業界の啓蒙活動だったり、業界を目指して入ってきた社員に対しての還元として、皆それぞれが大事にしたい時間をちょっとでも増やせるようになればいいなと思っている、と藤井さんは語ります。
法人化したときに目標に掲げた「1,000万円持って帰って週休2日取れる組合を作る」って約束はまだ果たせていないから、これを果たすっていうのが当面の目標かなと思ってます。
藤井さんの行動原理と実際行われていること、そしてこれからの夢…
藤井さんの想いをたっぷりと伺うことができました。
フジエレックスさんの会社ホームページはこちら
あとがき
管理技術者を目指す人が多い中で、「こういう覚悟もしなさいよ」っていうメッセージが含まれていて、電気主任技術者の独立を考えている人にとってかなりためになる話だったと思います。
同時に、藤井さんのお話は自分で経験したからこそ分かる部分が多いなと思うのです。
自分で痛い目を見ないとなかなか実感したり、自分の知識に落とし込んだりするのは難しいかもしれません。
しかし、今回お伺いできた藤井さんの経験を追体験、とまではいかずとも、少しずつつまんで、自分に当てはめて考えることはできると思うのです。
外部委託に興味を持つ方、独立を考えている方、これから電気主任技術者を目指す方…
ぜひ、藤井さんの貴重な経験談をひとかけらだけでも自分に当てはめて、自分の糧として持って帰っていただければ嬉しい限りです。
【著者情報】
電気主任技術者メディア編集部
電験や実務など、「電気主任技術者」にまつわる情報に特化したメディアコンテンツ制作集団。
電気主任技術者専門の転職エージェント株式会社ミズノワが運営する「電気通信ピカリ」内の記事を執筆・発信中。
転職エージェントとして、求人案内総掲載数240件以上、求職者様の総ご相談者数2,500名を超える実績を持つミズノワ監修のもと、分かりやすくて面白いメディア運営を進めております。





